アトピー性皮膚炎におけるステロイド剤の依存性とリバウンド

 ステロイドホルモンは、本来、体の中の副腎という臓器から自分で分泌していて、免疫、血糖、血圧、脂質・蛋白の代謝、水分代謝など生きる上で重要な体の働きを調節しています。常に環境の変化に応じて必要な量を調節しながら分泌しています。その自己調節力こそが自然治癒力の主な要素であり、健康を維持するのに最も大切なことです。

 ところが、ステロイド剤を皮膚に塗ると、一度、体内に吸収され、1か月位かけて体から抜けていきます。数日ごとに塗ったとしても、抜けきらないうちにまた塗ってしまうので、ステロイド剤が体の中にたまっていきます。このようにステロイド剤の塗布を続けていると、自分のステロイドホルモンがサボってしまい、自己調節力が弱くなります。

 このような状態でステロイド剤をやめると、ステロイド剤が1か月くらいかけて徐々に抜けていくのですが、ホルモンの自己調節力が弱っているのが、数か月かけてゆっくり改善していくものですから、当分の間、ステロイド不足が続きます。それがリバウンドといわれるもので、アトピー性皮膚炎の激しい悪化状態を招きます。

 新潟大学の安保先生によれば、ステロイド剤の分解産物が酸化コレステロールとなり、数か月間にわたり皮膚に蓄積しそれがアトピー性皮膚炎の悪化を招くといわれています。また、ステロイドへの依存は皮膚のステロイドホルモンへの感受性が低下することによっても強められるといわれています。最近、皮膚でステロイドホルモンが産生されることも指摘されていますが、依存の原理は同じことです。

 リバウンドの程度は個人差が大きいのですが、ステロイドを使ってきた量や期間、もともとの重症度にもより、たいしたことなく経過することもあります。また、適切な治療と本人の努力によってある程度和らげることも可能です。

 プロトピック軟膏が、ステロイド軟膏の代わりに使われることがありますが、これも、ステロイド剤と同じ免疫抑制剤で依存性があり、同じように中止後にリバウンドが生じやすい薬品です。

保湿剤依存と脱保湿の必要性

 ステロイド剤だけでなく、保湿剤をやめないと、健全な皮膚に戻りにくいことが指摘されています。当院でもできるだけ保湿剤に頼らない治療をしています。

 皮脂は、毛のう(毛穴の中)で作られて、皮膚が乾燥するから分泌されるのです。常に皮膚に保湿剤とくに油性のものを塗っていると、自分の皮脂の分泌がサボってしまい、健全な皮脂膜ができにくくなります。汗腺は、汗孔(汗の出口)や毛孔(毛穴)に開いており、いつも保湿していると、汗や炎症物質が皮膚の下にこもって、アトピー性皮膚炎を悪化させます。また、保湿剤が途中で合わなくなって、かぶれることもあります。
 したがって、なるべく保湿剤を使用しないほうがよいのです。

 ただし、悪化してジュクジュクした部位や傷に塗る薬は使うことがあります。乳児のよだれかぶれの部分から食物抗原が吸収されることもあるので、よだれかぶれの予防や治療に、また、手は刺激を受けやすく、手荒れは日常生活に差し支えるので、外用剤を使うことはあります。一般的に外用剤はなるべく塗らないほうが早く良くなりますが、化粧水程度の毛穴をふさがないものは使うこともあります。